紹介したいアメリカの小話があるので書いておく。
アメリカの刑務所に捕まっていた麻薬王の死刑囚が自暴自棄になり、常に暴れていて手に負えない状況になっていた。
そんな時、神父が任せてくださいと名乗りを上げ、麻薬王と面談したあと、麻薬王は急におとなしくなり、最後まで何も問題を起こさずに死刑台に立ったという。
どうやって神父は死刑囚を手なづけたのか?
神父は麻薬王の男にこう言ったのである。
「私は麻薬王の仲間から依頼された協力者でこの刑務所からあなたを逃がすために送られてきた。暴れるとマークが厳しくなるので出来るだけ静かに過ごしてほしい」
と。
そして時々面談して、
「計画は順調に進んでいる、もう脱獄計画は最終局面だ」
と、伝えて静かにしているようにいい、聖書を渡して部屋を出る。
その聖書には「決行は最後の瞬間だ」というメモが挟んであった。
それを見た麻薬王は死刑執行の瞬間に仲間が刑務所に押し入り、自分を逃してくれると信じて絞首台に笑顔で登っていったのであった。
実に面白い。人は希望を与えられるとその希望だけが見えて他は何も見えなくなるということである。
例えその希望が幻であったとしてもその希望にすがり、笑顔で死んでいくのである。